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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

世界の巨大恐竜博2006始末記② ミラガイア

イメージ 1
↑ミラガイア・ロンギコルムMiragaia longicollumの骨格図
模式標本ML 433と参照標本ML 433-Aからなる
スケールは1m

 こういう時は勢いである。特にシリーズものにする気はなかったのだが、気まぐれに世界の巨大恐竜博2006始末記第2弾ということにしておく。

 前記事で少し触れたのだが、世界の巨大恐竜博2006ではポルトガルの上部ジュラ系の恐竜たちにもスポットを当てていたわけである。ポルトガル産恐竜の復元骨格は2点来日しており、ひとつがロウリンニャノサウルスLourinhanosaurus、もうひとつがダケントルルス・アルマトゥスDacentrurus armatusのキャプションのついた大型剣竜であった。
 さて、それからしばらくして(09年)、ポルトガル産の大型剣竜が新属新種として命名されたわけである。ミラガイア・ロンギコルムMiragaia longicollumとして命名されたその剣竜こそ、世界の巨大恐竜博2006にて来日していた「ダケントルルスの全身骨格」であった。(明らかに下半身が作り物めいていることに図録をお持ちの方はとっくにお気付きだろう。)

 ミラガイアの模式標本はヨーロッパ産剣竜としては群を抜く保存状態であり(ダケントルルスも椎骨や四肢はかなり知られているが、いかんせん頭部と皮骨の形態に関する情報に乏しい)、非常に重要である
 模式標本ML 433は1999年の夏にポルトガルはミラガイア(地名)の切り通しで発見された。切り通しの工事の際に下半身は破壊されてしまったようだが、それでもほぼ完全な前半身(関節はしていなかった)が採集された。上の図で示した以外に肋骨がいくつかと血道弓ひとつが知られている。後に同じ産地から幼体の腰帯(といくつかの椎骨。我ながらひどい駄洒落だML 433-Aが採集されている。

 ミラガイアの解剖学的な特徴については皆様ご存じの通りである。模式標本には15個の頸椎(環椎と軸椎を欠く)が保存されており、よって頸椎は鳥盤類でも屈指の17個と推定される(これに勝るのはオロロティタンのみである)。前肢は剣竜にしてはかなり長く(基盤的な特徴と言えばそうかもしれない)、いわゆる(ステゴサウルスができたとして)三脚立ちは厳しそうだ。部分的ながら頭骨も残っており、かなり平べったい頭だったらしい。
 背中の皮骨プレートは比較的小さく、恐らくは2列並行に並んでいたと思われる。ケントロサウルスのように、途中からスパイク状に変化していくかどうかははっきりしない(が、筆者はなんとなく採用した←)。模式標本では長いスパイクが1本発見されており、一般にこれは肩棘として復元される。模式標本のスパイクが肩棘でなかったとしても、ミラガイアに肩棘があった可能性はかなり高いと言えるだろう。

 ミラガイアはダケントルルスの姉妹群とされ、ダケントルルス亜科Dacentrurinaeをなす。ダケントルルスはひとまずイギリスなどヨーロッパから化石が知られており、ミラガイアと同じ年代(ジュラ紀後期、キンメリッジアン後期~チトニアン前期 1億5000万年前)とされている。
 実のところミラガイアの独自性を示す特徴がみられる骨はダケントルルスの発見部位とは重複していないという指摘もあり、よってミラガイアをダケントルルスのシノニムとする意見もある。ただ、ダケントルルスの頸椎とミラガイアのそれとはだいぶ趣が違うようである。そんなこんなでミラガイアは有効名とされている。

■追記 またもやひろさんのブログにて連動記事を書いていただきました。ありがたい限りです。ミラガイア以外にも懐かしい写真が出ているので、ぜひ参照されたし。
 あー、俺中1かぁ…(遠い目)