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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

世界の巨大恐竜博2006始末記① ズビ・アトランティクスZby atlanticus

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↑ズビ・アトランティクスZby atlanticusの骨格図
肩関節までの高さはおよそ3m

 今年記載されたのだが、覚えておられる方がいるかどうか。本日取り上げるのはポルトガル竜脚類ズビZbyである。

 さて、本ブログの読者の方の中にはこいつの化石(キャストだったが)を目にされた方も少なくないはずである。世界の巨大恐竜博2006(もう8年も前か!)において「カマラサウルス(sp.)」のキャプションの下展示されていた標本である。
 2006年当時の時点で本標本の分類は暫定的なものであった。解剖学的特徴は当時知られていたどの竜脚類とも一致せず、(何を根拠にしたかは知らないが)やむなくカマラサウルス属とされていたのである。(もっとも、カマラサウルスと少なからず近縁であるとは考えていた節がある。)

 ズビの標本(今のところ模式標本ML 368のみ)はほぼ上の図に示されているとおりである。実際にはこれの他に頸椎の神経棘1つ、歯根のついた歯(つまり、他の種のものが紛れ込んだ可能性は低いということだ)も知られている。
 問題は系統関係である。いかんせん化石が部分的だったりでクラドグラムは作成されていないのだが、ひとまず本種はトゥリアサウリアTuriasauriaに属すると考えられている。

 トゥリアサウリアと言われてピンと来る方がどのくらいいるだろう(正直筆者もよくワカンネ)。目下ヨーロッパ固有とされる、比較的基盤的な竜脚類のグループである。模式属であるトゥリアサウルスTuriasaurusはいくつかの部分骨格(頭骨を含む)が知られており、全身骨格が復元されている。骨格図はだいたいこんな感じ。復元されたトゥリアサウルスの頭骨は表面的にはジョバリアJobariaに似ているように見える。基盤的なやつはみんなこんな感じなのかもしれないが。。。)
 トゥリアサウリアはネオサウロポーダ(新竜脚類Neosauropoda)の外群とされている。このあたりの系統関係についてはガタガタなのだが、一応マメンチサウルス(類)よりは派生的らしい。(実のところトゥリアサウリアが自然分類群なのかどうかは疑問の余地もあるらしい。正直この辺はさっぱりである。) 竜脚類の分類自体、ここ10年余りでクレード名がやたら増えたりでついていくのもやっと(大嘘。地球人になぁ…竜脚形類のクレード名などぉ……覚えられるわきゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!(cv.子安))だったりするのが正直なところである。

 ズビが発見されたのはポルトガルのロウリンニャLourinha(aの上に~が付く)層である。年代は北米のモリソンMorrison層とほぼ一致する。
 モリソン層とロウリンニャ層では複数のごく近縁ないしは同じ属の恐竜が知られている(アロサウルス属やトルヴォサウルスTorvosaurus属など)。一方で、ロウリンニャノサウルスLourinhanosaurusやミラガイアMiragaia(あまり関係ないが、世界の巨大恐竜博2006にて展示されていた「ダケントルルスDacentrurusの全身骨格」は命名前のミラガイアである)、ズビなどは(近縁種も含めて)北米からは知られていない。
 当時のヨーロッパは多島海的な状況であり、イベリアはちょうど北米とアフリカとの「橋」にあたる。先述したモリソン層(やタンザニアのテンダグルTendaguru層)と共通する恐竜は、そのどちらか(あるいは両方)から渡ってきたと思われる。

 竜脚類の進化と古地理の関係はあまりわかっていない。しかし、北米やアフリカのる撃脚類よりも原始的なものが、それらと同じ時代にヨーロッパに留まっていたことは示唆的である。今のところ北米やアフリカからはトゥリアサウルス類らしき化石は出ていないようだ。あるいは、より派生的であるディプロドクス上科やマクロナリア類に先を越されていたということなのかもしれない。