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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

モザイケラトプス・アズマイMosaiceratops azumai

イメージ 1Mosaiceratops azumai ZMNH M8856 (holotype).
Left lateral view of skull (a), right lateral view of skull (b),
and skeletal reconstruction (c).
Scale bar is 10cm.
Modified from Zheng et al. (2015)

 懸案事項は星の彼方に吹き飛ばした筆者であるが、レポートを書かなければならなかったりなんだりで仕込みがさっぱりである(一応次回はタルボサウルスを予定)。とはいえ、降ってわいた新属新種の角竜である。取り上げないわけにはいかないだろう。

 モザイケラトプス・アズマイが産出したのは中国は河南、Xiaguan層(もともと桑坪Sangping層のいち部層だったらしい。漢字がわからぬ・・・)である。年代が定まっていないようで「白亜紀後期のいつか(チューロニアン前期ないし中期~カンパニアン中期)」と恐ろしく年代の幅が広い。一応同じ地層からナンヤンゴサウルスNanyangosaurusも出ているのだが、年代を知る手助けにはなりそうもない(基盤的なハドロサウルス上科の恐竜はなんだかんだマーストリヒチアンまでぴんぴんしているのだ)。
 年代の話は現状どうしようもないのでさておき、本種はかわいらしい(多分)小型の角竜である。ほぼ完全な頭骨を含む部分的に関節した骨格が知られており、とりあえずアーケオケラトプスに全体として似ているように見える。

 全体的に見ればありがちな基盤的ネオケラトプス類であるモザイケラトプスであったが、本種のキモはモザイク的に見られるプシッタコサウルスと共通の特徴である(風変わりな属名はここから来ている。種小名がアーケオケラトプスの記載者のひとりにしてFPDM特別館長の東せんせーに献名しているのは言うまでもない)。
 モザイケラトプスとプシッタコサウルスとで共通する(他の基盤的ネオケラトプス類にはない)特徴のうちわかりやすいものと言えば、相対的に高い位置にある鼻孔や大きくて歯のない前上顎骨といったところである(下図の頭骨図参照)。

イメージ 2
Zheng et al. (2015)による系統解析の結果

 系統解析の結果、モザイケラトプスは最も基盤的なネオケラトプス類とされた。プシッタコサウルス、およびそれともっとも近縁なネオケラトプス類である本種が前上顎骨歯をもたないことは、他の基盤的ネオケラトプス類にみられる前上顎骨歯が一度失われたのち再進化したものである可能性を示唆している。
 モザイケラトプスは、これまでかなり特殊化した角竜とみなされていたプシッタコサウルスと、基盤的なネオケラトプス類との形態的ギャップをある程度埋めるものである(プシッタコサウルスが特殊化した角竜であるのは間違いないだろうが)。本種の発見が、謎に包まれていたプシッタコサウルスの起源に一筋の光を投げかけているのは確かである。