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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

ラ・ボニタ

イメージ 1
↑Skeletal reconstruction of Bonitasaura salgadoi.
Based on MPCA 460 (holotype) and MPCA 467.
Scale bar is 1m.

 ティタノサウルス類といえば眩暈がするほど多様なグループであり、見た目もかなりバラエティに富んでいるらしい(らしい、というのは大概の種が断片的な骨格に基づいていることによる)。すらりとしたスマートなものから鎧竜と見まごうばかりのどっしりしたものまで、実に様々だったようだ。
 体型がそれだけ多様なら、頭骨も多様であって然るべきである―――と言いたいところだが、まともな頭骨の知られているティタノサウルス類はかなり少ない。残っていても大概は脳函だけであり、直接の復元は難しかったりする。

 その点、断片的とはいえ頭骨の「外身」の要所が保存されていたボニタサウラの模式標本は幸運であった。ラ・ボニタの丘で発見されたそれは部分的に関節がつながった状態で残されており、部分的とはいえまんべんなく体骨格も保存されていたのである。
 ボニタサウラが産出したのはアルゼンチンはパタゴニアのリオ・ネグロ、バヨ・デ・ラ・カルパBajo de la Carpa層(サントニアン)である。模式標本から20mほど離れた場所からは他に2体のボニタサウラ(1体は模式標本と同サイズ、もう1体はやや小さい)が発見された。模式標本では神経弓と椎体の癒合が進んでおらず、従って亜成体であると考えられている。模式標本と同サイズの参照標本(MPCA 467)も、おそらくは亜成体なのだろう。

 ボニタサウラは(それなりに復元できそうな)頭骨と体骨格の揃った数少ないティタノサウルス類のひとつであり、従ってティタノサウルスの混沌とした系統関係を解き明かすカギになりうるはずである。当初ネメグトサウルス科とされた本種であるが、その後の研究でそう近縁でもないらしいことが明らかになった。
 再記載の際におこなわれた系統解析では、ボニタサウラはロンコサウリア(フタロンコサウルスとメンドーザサウルスMendozasaurus)、リンコンサウルスRinconsaurus、ムイェレンサウルスMuyelensaurus、そしてアンタークトサウルスと近縁とされた。要するに、南米の中型~大型ティタノサウルス類のまとまったグループ(アエオロサウルス類とは姉妹群となる)をなすということである。

 結局のところ比較可能なレベルの骨格(と頭骨)があまりないということもあり、ボニタサウラや他のティタノサウルス類の系統関係はあまりはっきりしていない。とはいえ、長い首をもち、かつ竜脚類の中でも有数の巨体を誇るフタロンコサウルスと近縁らしいというのは興味深いところである。
 ボニタサウラの首や胴の神経棘はよく発達しており、かなり筋肉質であったことがうかがえる。首と尾は(竜脚類にしては)あまり長くないようだが、四肢はかなり長い。(あるいは、模式標本(にして最良の標本)が亜成体であることも多少影響しているのかもしれないが。)
 ボニタサウラは口先の四角く広がった竜脚類の代表格としてニジェールサウルス、アンタークトサウルスと並んでよく取り上げられるのだが、実のところニジェールサウルスと比べればそう口先が広がっているわけではないようだ。吻の相対的な幅はボニタサウラ<アンタークトサウルス<ニジェールサウルスといったところで、あるいはこれはボニタサウラがニジェールサウルスほどはグレイザーに特化していないことを示しているのかもしれない。

(今回もSさんに資料のご提供を頂きました。ありがとうございます)