ヘル・クリーク層(というかランス期の北アメリカ北西部全般)のハドロサウルス類といえば、実質エドモントサウルス・アネクテンス一択である。アナトティタンは最近ではE.アネクテンスのシノニムになりがちであり(筆者もそれでいい気がする)、この辺は多様性低下の例として語られがちでもある。
さて、エドモントサウルス/アナトティタンの(良好な標本に基づく)全長はざっと10mほどとされており、ハドロサウルス類としては中大型の部類に入ると言える。ティラノサウルスと比べると少々見劣りするのだが、実際はもっと大きな個体がいた可能性がある。
例えば、1999年の時点で「長さ1.5mの大腿骨」が発見されており、(もしこれがE.アネクテンスならば)全長12mほどの個体がいたことを示している。さらに、最近になってもっととんでもない標本が(予察的に)報告されている。
"Becky's Giant"ことMOR 1609は上顎骨と頬骨からなっている(E.アネクテンスとアナトティタンの特徴を合わせ持っているらしいので、つまりそういうことだろう)のだが、上顎骨の歯列の長さが570mmに達し、頭骨全体の長さは1.5mほどになるとされる。アナトティタンでも頭骨の長さは1.1mかそこら程度なので、Becky's Giantの大きさは推して知るべし。
さらに、関節した腰帯と尾、部分的な後肢からなる"X-rex"ことMOR 1142も凄まじい。尾(どうも完全な状態らしい)の長さはなんと7.6m(!)になるという。適当にググって引っかかる骨格図を指で測ってやればわかることだが、X-rexの全長はざっと15mほどにはなるようだ。要するに、シャントゥンゴサウルスに匹敵するサイズということである。