GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

最古のケラトプス科を求めて

イメージ 1↑Skeletal reconstruction of "Menefee centrosaurine" NMMNH P-25052. 
Two dorsal vertebrae, ribs, and partial sacrum also recovered. 
Notes: cervical vertebrae are fused.
Scale bar is 1m.

 読者のみなさまは、筆者が角竜好きであることをとうの昔にご存じだろう(断言)。角竜の花形といえばケラトプス科なのだが、ケラトプス科の起源というのはあまりわかっていない。
 ざっと9000万年前にアメリカ南西部でズニケラトプスZuniceratopsが、中央アジアでトゥラノケラトプスTuranoceratopsが(化石記録上)唐突に出現し、その後1000万年経って、いきなりフリルにごてごての装飾をもったセントロサウルス類が出現するのである。
 気持ち遅れて化石記録上にカスモサウルス類も出現するのだが、こちらもメルクリケラトプスMercuriceratopsのような訳の分からない奴からジュディケラトプスJudiceratopsのような地味っぽいのまで多様である。

 実のところ、断片的なケラトプス科の化石であれば、8000万年前(カンパニアン中期)以前―――サントニアンの終わりからカンパニアンの前期にかけて、北米でちょこちょこ見つかっている。例えば、アルバータのミルク・リバーMilk River層(サントニアン後期~カンパニアン前期:~8450万から8350万年前ごろ)からcf.ブラキケラトプスとされる化石(不定のセントロサウルス類であろうことは言うまでもない)、モンタナのトゥー・メディスンTwo Medicine層下部(サントニアン末期?~カンパニアン前期)から不定のケラトプス科、そしてニューメキシコのメネフィーMenefee層(サントニアン後期~カンパニアン前期)から、今回紹介する不定のセントロサウルス類が産出している。

 メネフィー層のセントロサウルス類は、断片的ではあるものの頭骨と体骨格の両方が知られている。よく保存された鱗状骨は、この時点でセントロサウルス類のフリルの基本形が出来あがっていたことを示唆している。鱗状骨の形態はワウウィープWahweap層産のディアブロケラトプス sp.("Nipple Butte skull")とよく似ているが、どの程度系統的なつながりがあったのかは実のところよくわからない。鱗状骨とは対照的に、前歯骨には「押し下げられた咬合面」がみられず、この点は年代と合わせ、かなり基盤的なセントロサウルス類ということを意味するのだろう。
 本種(命名するには断片的すぎるが、新属新種なのは多分確実でしょう。だがその他一切のことは(ry)の特筆すべき点として、その体サイズが挙げられる。恐らく基盤的なセントロサウルス類であるにもかかわらず、本種はセントロサウルス並みの体格を誇る。ディアブロケラトプスより二回り近くデカいのだ。

 断片的な標本ではあるが、この“メネフィー層のセントロサウルス類”はかなり示唆的である。
 カンパニアンの前期、ひょっとしたらサントニアンの後期の時点で、明らかなセントロサウルス類がアメリカ南西部に現れていたこと、前歯骨には基盤的な(=仮説的なセントロサウルス類とカスモサウルス類の共通祖先の)特徴を残していたらしいこと。すでに体サイズの大型化が起きていたこと…。つまるところ、仮説的な“最古(かつ最も基盤的な)のケラトプス科角竜”は、もっと古い時代にいたということである。

 ハドロサウルス科やティラノサウルス科については、ここ20年余りでずいぶん初期進化への理解が進んだ。一方でケラトプス科やパキケファロサウルス科の初期進化については、未知の領域が極めて大きい。化石記録上では、十分に派生的なメンバーが
ある日突然出現するのである。
 近年ミルク・リバー層では大規模な発掘調査が進められており、こうした恐竜たちの初期進化について大きな情報を与えることが期待されている。カンパニアン中期以前のケラトプス科の研究はここ20年余りでやっと始まったようなものであり、まだまだ初歩の段階にあると言ってよいのだろう。