GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

水底より来るもの

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↑アレトペルタ・クームジAletopelta coombsiの関節した腸骨と後肢。
腸骨の上に散らばる皮骨に注意。写真はflickrより
Articulated illia and hindlimbs of Aletopelta coombsi
Osteoderms spattered on illia. Image from flickr.

 狙ったわけでもないのだが最近メジャー種が続いたわけである。そういう訳で(?)恐ろしくマイナーな種ではあるのだが、今回はアレトペルタを取り上げたい。

 お気付きの方もおられるだろうが、本ブログの裏テーマ(特に決めたわけではないが)のひとつとして、「海成層から見つかる恐竜」についてすでにいくつか取り上げている。アレトペルタもそうした海成層から見つかった恐竜のひとつである。
 アレトペルタはカリフォルニア(これも裏テーマのひとつ)のポイント・ロマPoint Loma層(カンパニアン後期、絶対年代は不詳)から、模式標本SDNHM 33909のみが知られている。模式標本は関節した腸骨と後肢(上の写真)のほか、遊離歯、部分的な前肢、いくつかの椎骨、そして多数の皮骨を保存している。皮骨は割と特徴的であり、肩の上に一対の上向きの棘(スコロサウルスのそれと何となく似ているがもっと大きい)をもつ。腰の上には六角形の小さな皮骨が散りばめられ、体の側面には一列に鈍角三角形のスパイクが並んでいたらしい。
 死んでから海に流され、サメにかじられたり無脊椎動物に食われたあと、沈んでさらに二枚貝に引っ付かれたりと壮絶な運命を辿りはしたが、保存状態自体はまずまずである。

 本種は1987年に発見されたのち、96年になってクームズ(種小名になっているのは言わずもがな)らによって不定のノドサウルス科であるとみなされた。この時、エドモントニアEdmontoniaとパノプロサウルスPanoplosaurus、そしてステゴペルタStegopelta(こいつもえらいマイナーである)とそれぞれ類似点が指摘されている。

 2001年になって学名が付いたわけであるが、この時アンキロサウルス科に分類されることとなった。頭骨や尾のハンマーは見つかっていなかったが、体骨格の形態はノドサウルス類というよりむしろアンキロサウルス類的であり、皮骨の形態もアンキロサウルス類に近いところがあったためである。
 記載者はアレトペルタをアンキロサウルス科の、恐らくは原始的なメンバーであるステゴペルタ亜科Stegopeltinaeとした。しかし、2004年にはあっさり疑問名になってしまった。

 今年の春に出たAlbourの(哲学)博士論文(鎧竜好きは目を通しておくことをおすすめする。先日正式記載されたジアペルタのほかにモンゴル産の新属新種が一つ、ほかにクライトンサウルスが疑問名になってたりリャオニンゴサウルスの腹甲が否定されてたり色々気になる情報満載である)では、アレトペルタを有効名とし、尾にはハンマーをもたなかったであろうとしている。

 結局Albourの系統解析でも、アレトペルタ(そして“ステゴペルタ亜科”の他の種も)の系統的な位置付けはいまいち定まらなかった。アレトペルタはアンキロサウルス科の基盤的な位置に置かれた一方で、他のステゴペルタ類(ステゴペルタとグリプトドントペルタGlyptodontopelta)はノドサウルス科とされたのである。もっとも、アンキロサウルス科以上にノドサウルス科の系統的な研究が進んでいないこともあり、この結果が妥当と言えるかははっきりしないようだ。

 いずれにしても、ユニークな鎧竜がカンパニアンの終わりのカリフォルニア(近く)に暮らしていたのは確実である。あまり知られてはいないが、なんだかんだ白亜紀後期の北米産鎧竜のバリエーションはかなり豊富である。