↑アンキロサウルス・マグニヴェントリスAnkylosaurus magniventrisの骨格図
AMNH 5895とAMNH 5214に基づく。
スケールは1m(AMNH 5214に合わせてある)
ご存じの方も多いだろうが、ここ数年の再研究によって、70年代に一度統合されたエウオプロケファルス属が再分割された。すなわち、ディオプロサウルスDyoplosaurus、スコロサウルスScolosaurus、アノドントサウルスAnodontosaurusの復活である。例えばG.ポールによる「エウオプロケファルスの骨格図」の大部分がスコロサウルスの模式標本に基づいていたり、科博や福井の「エウオプロケファルス」はスコロサウルス(あるいはオオウコトキアOohkotokia)だったりするので、今後しばらくは注意が必要であろう。
さて、この裏でなんとなく影が薄くなっている気がする(明らかに杞憂)のがアンキロサウルスである。
アンキロサウルスと言われてあなたはどんな復元イメージを思い浮かべるだろうか。いろいろ思い浮かべていく中で、いまいちこの恐竜の復元が定まっていないことに気付いた方もいらっしゃると思う。
↑アンキロサウルスの主要な骨格。AMNH 5214と5895は皮骨も知られているが省略した。また、AMNH 5214は他に肋骨もいくつか知られている。
そんなわけでアンキロサウルスの全長はいまいちはっきりしない。とはいえ、目下最大の標本であるCMN 8880で全長およそ7mというのが妥当なところだろう。意外と大きくない(気がする)のはポイントである。(とはいえ、アンキロサウルス科は属間でプロポーションの差が大きいようでもある。この辺は注意しておくべきだろう。アンキロサウルスの骨格図に関しては、不足部位はスコロサウルスを参考にしている。)
アンキロサウルスの皮骨の配置ははっきり分かっていないが、様々な部位のものが発見されている。とりあえず、非常によく発達した“ハーフリング”(首を覆うアーチ状の鎧。ホビットの派生ではない)が存在するのは確かである。また、背中の大半は、低いキールをもった楕円形の皮骨で覆われていたようである。腰から尾にかけての側面には三角形の皮骨が並んでいたらしい(サイカニアもといアンキロサウルス科の未定種あるいはcf. ピナコサウルスMPC 100/1305をショボくしたようなものを想像されたい)。
さらに、前肢にもMPC 100/1305と同様の鎧があった可能性が指摘されている。
(実のところ、アンキロサウルス科全般に、MPC 100/1305のような前肢や脇腹の鎧があったと考えた方が良いのかもしれない。単にMPC 100/1305の保存状態が良かっただけという話は大いに有り得ると筆者は思っている。)