本当なら明日からフィールドに殴りこむ予定だったのだが、台風である。筆者のフィールドは山ではないので雨に関してはまぁよしとして(あまりよくはない)、時化ると非常にまずい。てなわけで明後日以降フィールドに出られることを祈りつつ、明日はZナイト(アマゾンさん発送はよ。っつーか駅のソ●マップとかで入荷してたんじゃね?)でも組んだり、先行研究の論文でも読むつもり(化石の産出地点をプロットしておきたい)である。
そんなわけで(?)今回は性懲りもなくドリプトサウルスがらみの記事である。単に先日ブログで取り扱ったシオングアンロンXiongguanlongの体骨格を混ぜ込んで描きなおしただけだったりもするのだが、お付き合い願いたい。
ドリプトサウルスそのものについては過去記事で好き勝手に書いた通りである。模式標本ANSP 9995(および同一個体とされるAMNH 2438)が産出した地層は資料によってニューエジプト層New Egypt層だったり、ネーヴシンクNavesink層(の上部?)だったりとばらつくのだが、ここでは一応Brusatte et al., 2010に従ってニューエジプト層としておく。
さて、ニューエジプト層(マーストリヒチアン後期? ニューエジプト層の上にはホーナーズタウンHornerstown層が載っている。これの年代はもっぱらマーストリヒチアンの終わり(K/Pg境界を含む)とされていたが、どうも古第三紀の最初期、ダニアンの地層である可能性が大きいようだ。多くの資料ではもっぱらマーストリヒチアン前期から中期ごろとされるニューエジプト層だが、とりあえずマーストリヒチアンの後期、6700万年前ごろとしておくべきらしい)からは、ドリプトサウルスの他に“ハドロサウルス・ミノールHadrosaurus minor”と命名されたハドロサウルス類が知られている。
“ハドロサウルス・ミノール”の模式標本は恐ろしいことに遊離した胴椎(YPM 1600)だけである。他にもいくつかの標本が“ハドロサウルス・ミノール”に分類されているが、ANSP 15202を除いてはいずれも単離した標本である。コルバートによって記載されたANSP 15202は一応骨格の体を成している(とかなんとか言いつつも、上に示したとおり、涙なしには語れないレベルの貧弱さである)。
さて、ANSP 15202の産出層は厳密に言えばネーヴシンク層であり、一応(?)ニューエジプト層とは異なる。年代的にも若干古い(マーストリヒチアン中期)らしい。YPM 1600と同じ種に分類する妥当性については当然疑問がわく(なにしろYPM 1600は遊離した胴椎に過ぎない)。
そんなわけでANSP 15202はホーナーとベアドによってエドモントサウルス属に分類されたこともあった。一方で、新属新種のハドロサウルス類とする意見もある。もっとも、直近の論文では“ハドロサウルス・ミノール”としたうえで疑問名にされてしまった。とはいえ、サイズの割には成体であるらしく、大腿骨にも独自の特徴らしきものがみられる。(YPM 1600と同じ種とするかはともかく)アパラチア大陸独自の属だと思って罰は当たるまい。