恐竜博2002で小さいながらも目を引いた(一応筆者も記憶がある)展示が「カマラサウルスの幼体」“Toni”ことSMA 0009である(図録参照)。99年にハウ発掘地のSクオリーで発見された標本であるため、図録のボーンマップには出ていない。
非常に保存状態は優れており、頭骨とそれに近い頸椎の一部、尾の後半を除いてほぼ完全な骨格である。恐ろしいことに、鎖骨(当初は叉骨と同定されたが、実際には片側の鎖骨であった。いずれにしても、竜脚類の胸郭の復元に重要である)まで発見されている。ひとまずの予察的な研究からToniはカマラサウルスの幼体(種については当然のことながら不明である)とされ、カマラサウルス型の頭骨模型を加えて展示された。
Toniのプレパレーションが進むにつれ、いくつかディプロドクス科の特徴が発見された。これを受け、BHIは「アパトサウルスの幼体」としてToniの復元骨格を製作したのである。
これで話は落ち着くかと思われたのだが、そうは問屋がおろさなかった。その後の研究で、Toniに見られる「ディプロドクス科の特徴」は幼体の分類の指標には使えないらしいことが判明したのである。詳細な研究の結果、Toniは基盤的ティタノサウルス形類、おそらくは「ブラキオサウルスの幼体」であるとされたのであった。