しばらく前にこんな話を書いたわけだが、どっこいこういう話も聞かれていたわけである。翼竜フィールドガイドはいつの間にやら試し読みページができあがっていたりしたのだが、一方で海生爬虫類フィールドガイドの書影も上がってきた(しかも発売予定は今秋)のであった。
ポールの翼竜の骨格図といえば恐竜骨格図集の巻末が思い出される筆者であるが、試し読みページに残る面影はプテロダクティルス・“コキ”のバストアップくらいである。ディモルフォドンはともかくクテノカスマに妙な不安を覚えたのは筆者だけではないはずだ。
邦訳も出た恐竜フィールドガイドの方はそれなりに全盛期のポールの香りも残っていた(が、邦訳された第2版の方は、第1版と比べるとこのあたりはだいぶ改悪されていた)わけだが、翼竜はそもそも全盛期のポールがあまり描いていないはずの題材である。ウィットンの一般書を見れば明らかだが、翼竜は2000年代に入ってから骨格図を描けそうな面子がずいぶん増えた(その大半が中国組である)。これはつまり、翼竜フィールドガイドに掲載されるかなりの数がロックが死んで以降のポールの産物であろうことを意味している。シノプテルスを見てちょっと悲鳴を飲み込んだ筆者でもあり、このあたりは(先日満を持して出版されたケツァルコアトルスのこともあり;索引にはケツァルコアトルス・ノースロッピのほかに「Quetzalcoatlus unnamed species」と「Javelinadactylus sagebieli」の文字が見える)よく心を落ち着けて向かい合うべきなのだろう。
翻ってなおのこと未知数なのが海生爬虫類フィールドガイドである。ポールの海生爬虫類と言われてぱっと思いつくのは恐竜フィールドガイドに出ていたショニサウルスの骨格図くらいで、他のものは特にピンとこない今日この頃である。海生爬虫類の骨格図は(しばしば全長うんたらの話のネタとしても)わりあいにネット上でも見かけるものだが、たいがいの場合図画的な鑑賞に堪えるものではなく、椎骨のコピペぶりなどはクダを巻くのに格好のネタでさえあった。であればポールの出番は大いにあるはずなのだが、ここで海生爬虫類の骨格図の未知数ぶりがネックになってくる。
とはいえ、書影を見る限り、むしろ海生爬虫類フィールドガイドの方が翼竜フィールドガイドよりも安心感の持てる雰囲気である。べしゃべしゃに潰れた長骨を適当に補正して描くほかない(そもそもパーツも少ない)翼竜と比べれば、潰れていても各パーツの相対的なサイズが翼竜よりもずっと小さい海生爬虫類の方が(正統な)ポール式骨格図とは本来相性がよいということだろう(つまり、ポール式骨格図のディテールの密度の話でもある)。
立て続けのポールの新作ということで、にわかに骨格図めいてきた本年である。幸か不幸か、ポケモン化石博物館が1年ずれ込んだのがここにきて効いてきているようでもある。
ポールの新作を手放しで喜べないのは恐竜フィールドガイド第2版、同邦訳発売の時と同じ(それ以上というのが実際である)だが、ともかく価格は良心的であり、出来のよしあし(あるいは思想の問題でもある)はさておき包括的なレビューにも違いない。筆者としてはこのところずっと進めているもろもろと日程が被らないらしいことに安堵していたりはするのだが、そういうわけでロックの死んだ後の世界を歩いていくほかないようだ。